SILS 早稲田大学国際教養学部合格体験記 BUCHOさんの場合

<お名前>
BUCHO

<プロフィール>
都立T多摩高校、国際基督教大学(ICU)社会科学科卒業
BUCHOのICU受験対策を主催
不動産関連の翻訳業
趣味:ビリヤード、ギター
サークル:The Weekly GIANTS, ICU Debating Societyに所属

<受験形態・合格年度>
一般入試(センターなし)・2009年度入試合格

<予想得点>
国語得点 = 6割、30点/50点
選択得点 = 日本史 3割、15点/50点
英語得点 = 9.5割、95点/100点

<併願校>
なし

<SILSを受験するまでのいきさつ>

高校時代尊敬していた高校の担任が早稲田大学出身で、現役の時は早稲田にあこがれている部分があった。 ICUとSILSのコンセプトがICUと共通する部分が多く、開講しているオンラインでのICU対策講座において、SILSを併願する受講生を取り込めると思った。特に難関私大においてICUと同じくリスニングが必要になる点に注目した。

<SILSへの期待>

(もし入学するとしたら)国際的な学習環境。英語力のさらなる向上、早稲田ならではの組織力。

-入試対策-

<現代文>

足かけ10年ほどICUの人文科学および社会科学を読み続けているので、現代文にはかなり自信があった。ICUと比較すると文章が短く、何度も読み直して説くことができた。大問の1が親しみのある夏目漱石の『道草』だった。過去に鴎外の文章が出ていたし、国際教養ではいわゆる文豪の名文からの出題が多いようだ。ただし小説特有の明らかに答えが絞りきれない問題も複数あった。大問2は論説文で脳と精神的病に関する内容だった。こちらは小説の問題と比較すると理論的に選択肢を選ぶことで正解できる問題だった。

<古文>

古文は全く勉強せずに臨んだ。最後まで眺めたが、1問も分からなかったので、勘に頼るより確実に数問当てる作戦を取り、すべての選択肢において「イ」を選んだ。後日解答速報を見ると意外に「イ」の答えが多く、マーク運があったようだ。

<日本史>

選択科目は日本史を選択。古文と同じく全く勉強しないで臨み、分かった問題は全部で10問くらいだった。特に記述問題は8カ所ある空欄の内、2カ所しか書くことができなかった(「二毛作、大日本国帝国憲法」)。回収時ほかの受験生の解答用紙はぎっしりと書いてあったので、さすがにこれは恥ずかしかった。

ただし大問2で織田信長が絡んだ堺に関する出題(「信長の野望」をやっていたためちょっと自信あり)と、大問4の英語資料問題で専攻の政治思想に関連した”The Chrysanthemum and the Sword”(『菊と刀』)の一文を用いた出題があり、ここでも運の良さを感じた。分からない問題は勘に頼らず、すべて同じ記号を選んだ。

得点は解答速報によると50点中15点程度で、約3割だったようだ。早稲田の歴史(特に日本史)は非常に難しいという話を後から聞き、その通りだと思った。一方基本的な問題もそれなりに出題されていたので、それらの問題を確実に取ることも大切だろう。いずれにしてもこの教科ができないというだけで受験をあきらめてはいけない。選択科目があまり取れなくても受かる可能性はある。また高校の教科書を突き抜けたレベルであることから、自分のような社会人には逆に有利であるような気がした(3割しかできなかったので何も言えないのだが)。

<英語リーディング>

統計上合格最低点(ただし公開されている点は得点調整済みなので、単純な合計点ではない)は130-140点程度であり、英語が満点(100点)に近く、ほかの教科で30-40点程度取れれば、合格の可能性はあると踏んでいた。過去問を研究し、100点に近い点数を取るための解答順と時間配分を以下のように設定した。なお英語の制限時間はリスニング、ライティング、リスニングをすべて合わせて100分。

英語100分の解答順と時間配分
1. 大問1 リーディング(論説文)35分
2. 大問2 リーディング(小説・文学)35分
3. 大問5 英文和訳 10分
4. 放送によるリスニング大問3,4 例年10〜15分
5. 大問6 英作文 残り時間(5〜10分)

(*注:2010年度ではさらに形式が代わり、リスニングはリーディングとは独立した試験となる予定です)

ここでポイントとなるのは途中でリスニングが挟まれる点にある(2009年度入試の場合試験開始80分後に開始)。長文の大問1,2を読んでいる途中でリスニングが入ってしまうと、その大問を再び読み始めるのは困難だと思ったので、とにかくこの大問1,2を先に片付けることにした。また英文和訳はきっちりと指示通りにやる必要があるので10分以上かかるが、英作文は「自分の考えを述べる」ものであるので、残り時間に応じて細かく書いたり、おおざっぱに書くなど、ある程度時間に合わせて答えられると思ったので、最後に取っておくことにした。なおリスニングの時間は毎年異なるので、リスニング後にどれだけ時間が残っているかは年によって異なる。

計画ではリーディングに関しては大問1(論説文)から解くことにしていたが、これは大問2が例年小説や文学からの出題で、論理的というよりもある程度英語的な感覚で解くことが要求され、難しいと判断したからであった。つまり小説などの出題では一部論理的には答えにくい問題が含まれるため、確実に解ける問1から解こうというものである。しかし実際に受けた2009年度の出題では大問1がアインシュタインに関する出題で、文中に相対性理論に関する内容が含まれていたので、難易度が高く時間がかかると判断し、大問2から解くことにした。

大問2は野球のメジャーリーグに関するエッセイ。エッセイストのBill Bryson(ビル ブライソン)の著作からの出題だった。非常に幸運なことオーストラリア留学中”Down Under”という彼のオーストラリア旅行記がヒットしており、彼の文章はその本で読んだことがあった。また幼稚園の同級生である岩村明憲が近年メジャーリーグ活躍していることから、頻繁にメジャーリーグ情報ををチェックしていた。知っている作者かつ詳しいトピックだったので、25分ほどですべての問題に答えるえることができ、すべての問題に正解できた。この問題を終えて合格の可能性を感じ、気持ちが乗ってきた。

大問2の勢いで、大問1のアインシュタインの問題に戻る。大学入試とは思えないほど難しい語彙であり、分量もある。先ほどの大問2を予定より10分早く終えていたので、ゆっくり確実に読むことを心がけた。結局40分ほどかけて解き、こちらも全問正解できた。

引き続き大問5の英文和訳。この問題は文章の論旨を日本語で書けというものであるので、題意通りに解くならば、文章のエッセンスを汲み取る必要がある。ただし今回は満点を狙っているので、あまり文章を省くことなく、原文を細かく忠実に訳すことに努めた。15分ほどかけて日本語訳を完成。日本語要約というより逐語訳に近いものになったが、合格したところをみると、「要約していない」ことに対する減点はないものと考えて良さそうだ。内容は日本における英語教育に関連したものであった。

*後日リーディングの問1に関して本文を見直すと、原文と比較して簡単な語彙に置き換えられている箇所があった。高校生向けにある程度配慮している様子が伺える。

<英語リスニング>

続いてリスニング(大問3,4)。80分のリーディングを経て疲れているところにリスニングの放送が始まるので、集中力の維持が大切である。個人的にはSILS国際教養学部リスニング対策CDを発売しているくらいなので、特にこの箇所には自信があった。

実際に受験してみると、録音および出演者のクオリティが低く、語り手がページをめくるノイズや、咳払いなどが除去されないまま放送されていた。国際教養学部対策のリスニングCD作成においてノイズカットに多くの時間を費やした自分としては苦笑しながら聴いていた。また日本以外のアジア出身のノンネイティブスピーカーの声が含まれており、あまりいい発音ではなかった。

放送はナチュラルスピードよりややゆっくり目で、ニュースや報道などに比べるとかなりゆっくりに感じられた。2009年度は2008年度と同じく3択で問題が後から読まれる方式であり、大問3は2回読まれ、大問4は1回のみ本文が読まれた。ICUのリスニングと比較するとSILSの問題は難易度の高い問題ばかりで、さらに設問数が少ない。全問正解する人と、全問不正解する人が出てくるような、”Winner Takes All”とでも言うような問題だった。

<英語ライティング>

最後に大問6の英作文。リスニングの放送終了後は5分ほどしか時間が残っていなかったので、とにかく5分で英作文の解答欄をすべて埋めることを心がけた。過去問は全て解き、ネイティブ添削を受けていたので、英作文のパターンは頭の中でできていた。特に書き始めと結論の数パターンは練習を繰り返す内に自然に暗記していた。スペルミスをしても消しゴムで消す時間がなかったので、二重線で消しておいた。とにかく手を止めないようにした。ネイティブチェックを受けた書き出し、及び最終文は減点される余地がなく、分量はあり、テーマに沿った文章を書いたので、このパートも十分に得点できているはずである。

英語は選択肢の部分はほぼ全問正解、筆記の採点箇所を含めても9割以上は得点できたと思う。無事合格し、他の教科の出来映えを踏まえるとかなり満点に近い得点だったのだろうか。

<その他受験に関するアドバイス>

教室はカーテンを閉め切っており、かなり閉塞感があった。休み時間中は教室の外に出た方が良さそうだ。特に昼食は教室から出て取った方がよいだろう。8号館(法学部)の1Fのラウンジなどは積極的に利用するようにしたい。

感覚的にはやはり130〜140点くらいがボーダーで、自分は英語が100点中90-100点、その他2教科は合計で45点くらいだったのではないだろうか。

全体として英語勝負的な側面の強い試験であり、配点通り「英語の10点=他教科の5点」という感じだったと思う。英語の対策がそのまま合格につながる試験であり、特にあまり対策されていないリスニングと英作文をやっておくとかなり有利であると感じた。どちらもある程度パターン化されており、演習を積むほど効果が期待できる。

しっかり問題研究をして、形式に慣れ、リスニングや英作文をきっちりやり、「国教の英語を知っている」というピンポイントの対策は、特に英語が勝敗を左右する試験において精神的な余裕を生むことができたと思う。

<最後に一言>

早稲田からの合格通知は家族にもインパクトがあったらしく、なぜか近所の美容院の方に「早稲田大学に受かったんですってね?」と聞かれた。